大阪高等裁判所 昭和48年(ネ)2058号 判決 1974年11月27日
控訴人
株式会社嶋崎経済研究所
右代表者
嶋崎栄治
控訴人
安田茂晴
右両名訴訟代理人
坂井尚美
外二名
被控訴人
第一紡績株式会社
右代表者
鋼虎雄
右訴訟代理人
吉田朝彦
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実《省略》
理由
次に附加訂正するほか原判決理由と同一であるから、ここにこれを引用する。
一原判決八枚目表五行目の「ではない。」の次に、(株主総会招集通知の発信と株主総会との間には二週間の期間があるから、株主には総会の決議があつた直後に新株発行の差止めを請求する充分な余裕がある。)を挿入する。
二原判決八枚目裏四行目の末尾に次の文言を加える。
そしてこの結論は本件新株発行につき総会の特別決議を必要とするか否かによつて左右されない。けだし、商法第二八〇条ノ三ノ二の立法趣旨に則り、実質的に判断すれば、特別決議を必要とするか否かにより招集通知の効果を区別する理由がないからである。
三原判決八枚目裏一一行目と一二行目との間に次の(1)ないし(4)を挿入する。
(1) 商法第二八〇条ノ二第二項所定の株主総会の特別決議の欠缺の瑕疵は、新株発行無効の原因とはならないものと解すべきである(最高裁判所第二小法廷昭和四〇年一〇月八日判決、民集一九巻七号一七四五頁、同四六年七月一六日判決、判例時報六四一号九八頁、同四八年四月六日判決、金融法務事情六八三号三二頁参照)。
(2) 商法第二八〇条ノ三ノ二所定の「公告又は通知」の欠缺の瑕疵は、同条の立法趣旨から考えて、(イ)同法第二八〇条ノ三ノ三所定の適用除外の場合及び(ロ)株主が新株発行差止の請求をしてもそれが認められない場合を除き、新株発行無効の原因となるものと解すべきである。(この見解は、除外の場合として(ロ)の場合を付加する点において、原判決の見解を一部修正している。)
(3) 本件において、上記のとおり、商法二八〇条ノ二第二項所定の株主総会の招集通知及びその添付書類をもつて、同法第二八〇条ノ三ノ二所定の通知をしたものと解するのが相当である、と判断する。
(4) したがつて、右(3)のとおり判断する以上、本件新株発行が商法第二八〇条ノ二第二項所定の「特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スル」場合に核当するか否か及び株主総会の特別決議の欠缺の瑕疵の有無について判断する必要がない。
四よつて、控訴人らの本訴請求を棄却した原判決は正当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(小西勝 入江教夫 和田功)